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2007.10.03

『最愛』

真保裕一 新潮社

子どもの頃、両親を事故で亡くした姉と弟は、それぞれ別の親戚に預けられる。姉のほうは親戚宅と折り合いが悪く、高校になると家を出てしまった。
その後、18年間音信不通だった姉が、消費者金融で頭を撃たれ重体だと、突然警察から連絡が入る。同時に姉がその前日に結婚していたことも知らされるが、その夫は一向に姿を現さない。
姉に何が起こったのか、姉の夫はどこに行ったのか、部屋に残された7通の年賀状を頼りに姉の周辺を探っていく・・・・。


手帳と携帯電話は警察から返してもらえないので、部屋に残されていた年賀状しか頼りになるものがなかったというのだが。

ん~?私のところに来る年賀状なんて今付き合いのある人より、昔の同級生とか、遠方に住んでて会えない人とかが、年に1度の生存確認をするようなもの。
だから年賀状なんかで辿られても“いま”はわからないけどな~。

ま、この弟はがんばりました。
次々と人に会い話を聞いて、次の手段を得ていきます。ものすごい行動力と分析力です。

わかっていくのは姉のぶっとんだ行動!!
とにかく“理不尽なことをしているやつは許さない!”という正義の味方ばりの行動の数々。
(最初のほうに出てくる姉の勤め先で地味に事務してる姿とは結びつかないんですがね)

このあたりの、姉のしてきたことと、その周辺に出てくる男たちと最終的に選んだ夫のことなど、次々とわかってくるところは、どんどん読めて面白い。

が。
この事件の顛末で終わっていればよかったのに、そのあとにこの姉と弟の因縁がついてくる。
確かに、それがあればこその本書のタイトルであって、事件のことだけではどこが「最愛」なのかと感じていたのは事実であるが。

その因縁そのものにも引き気味だったけれど、最後の最後に弟がやったことはさらにその上をいき、ここに至るまでの行動をすべて否定する行為だと思う。

もしこれがどんでん返しを狙ったものであるのなら、大ハズレもいいところだと思う。


弟クン、けっこうかっこいい感じでよかったんだけどね~、残念!

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2007.10.02

『ヴェルアンの書 シュ・ヴェルの呪い』

榎木洋子 小学館ルルル文庫

侍の称号をもつ父・籐桐ヒロチカのもとへ、金髪碧眼の青年セルキスが訪ねてきた。病床のヒロチカはセルキスが来ることを待ち望んでいたが、姿も名前も知らないという。
娘のサツキは数日前にヒロチカに腕輪を託されていたが、その腕輪を元の持ち主のセルキスに返すためには侍にならないといけないと言われる。
ヒロチカが亡くなり、サツキはセルキスと共に侍試験に向かうことになるが・・・・。


和風のお話かと思えば、洋風であったり。無国籍ファンタジーというより、ごちゃまぜファンタジーという感じ。
今回は、和風がメインのようで、日本刀や袢纏、侍試験に時代がかった話し方をする男や挿絵にちょんまげ姿がでてきたりする。

そこにいかにも洋風ファンタジーな腕輪やセルキスが混ざってくるので、とても妙な雰囲気。でも違和感というほどのことでもない。

タイトルのイメージに程遠い“侍”が物語にどう活かされていくのか、楽しみだ。
サツキの剣技がかなりのものなので、バトルシーンにも期待ができそう。

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