『クリムゾン・ルーム』
高木敏光 サンマーク出版
ゲームクリエイターの高木は、ヒット作を生み出したことで順風満帆な生活をしているように見える。しかし、実態は新作ができず酒におぼれ自堕落な生活をしていた。
そんな時に、時々送られてきた意味不明なメールの差出人“K”が、高木に会いに来るという。“K”は高木の作品をオマージュした作品を作っていた・・・・。
本作は『CRIMSON ROOM』という密室からの脱出ゲームを元にした小説である。しかし、密室からの脱出をメインとした話ではなく、あくまでも『CRIMSON ROOM』や関連作『VIRIDIAN ROOM』の背景の物語といったところであった。
確かに背景がなければ、なぜ監禁されたのかわからないわけで、密室に監禁されるまで「ああ、こういう顛末で閉じ込められたのね~」「こういう発想でゲームができたのね~」とわかる。
作者の高木氏の名前がそのまま主人公の名前になっているので、なるほどこうやってできたのかと思ってしまうが、「いやいや、これはあくまでも小説だし」と何度となく自分に言い聞かせながら読み進めていたということも無きにしも非ず。
これが実話だったら高木氏は嫌~な人物で自分で自分を貶めていることになってしまう。・・・・・でも、そう思わせるような手法を取るところが、あざといというか、ちょっと読者を小バカにしてるようなきがしないでもない。まあ、それが高木氏の“毒”なのだろうが。
(実際の高木氏はご本人のブログで家族を大切にされている方とわかるので、だから小説のようなことを安心して書けるのかなとも思う。→ TAKAGISM 元ネタのゲームもここ。)
さて。
物語の中の高木は“K”が作った作品を高木の名前で売りあぶく銭を手に入れるが、酒におぼれ、カジノに手を出し、どんどん堕ちていく。しかし堕ちていく過程でいい思いもしているので何の同情もわかない。単なる自業自得。
さらにいえば、ようやく密室に閉じ込められ、脱出劇に期待したにもかかわらず、あまりにもあっさりした密室からの脱出にはがっかり。(というより脱出でもなんでもなかった。)ゲームがクリアできたときのような解放感を感じたかった。密室中の排泄行為など不快以外の何物でもない。
栄光から堕ちる男がどん底を見るが、そこに復活の光明を見つけ、本来自分のやるべきことを成し、再び栄光を手にする。ある種サクセスストーリーでもあるのだろうけど、残念ながらゲームをクリアしたときのような爽快感・達成感は感じられなかった。
やはりゲームとこの小説は別物として期待せずに読むのが正しい読み方だと思う。そして、活字になるより、Web小説や携帯小説だったら、もっと楽しめたのではないかと思う。(昨今の“携帯小説から生まれた云々”というのよりはかなりマシではあるが・・・。)
しかし・・・・・読み終わるとまた脱出ゲームをしたくなる。(そりゃ小説に満足してないから。)もしかして嵌められたのだろうか?
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